それでも恋するバルセロナ

Vicky Cristina Barcelona

 

 この映画を観終わってから一番感動したことは・・・脚本・監督のウッディ・アレンが70歳を過ぎてからの作品だということ。

 73歳で「こんな」恋愛?映画を作るなんて・・!

 

 舞台はもちろんみんな大好きバルセロナ。

 

 アメリカから夏休みにバカンスにやってきたヴィッキー(レベッカ・ホール)とクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)。

好青年と婚約中の堅実なヴィッキーと自分探し真っ最中のアーティストの卵クリスティーナは、仲良しだが恋愛に対しての考えは正反対。

 

 ふたりでバルセロナの夜を楽しんでいると・・・人目を惹くスペイン人画家のフアン・アントニオ(ハビエル・バルデム)が近づいてきて・・ふたりを小型飛行機で郊外の町オビエドへの週末旅行に誘います。

 

 ついていく気満々のクリスティーナに対して、私たちを安くみないでよ!とばかりに誘いをはねよけようとするヴィッキー。

 

 しかし気がついたらスペインの田舎町に三人で・・。

 

古い教会に並木道にひなびた灯台・・・女たらしである以外は、意外に誠実なフアンに次第に心を開いていくヴィッキー。詩集を出したことのない詩人という父親の存在までもカタルーニャ的で、きわめつけはワインとスパニッシュ・ギター・・・夜は更けて・・。

 

 この後しばらくは想像どおりの展開で書く必要もないくらいなんですが・・・わたくしなどが想像できない展開になってしまうのがフアンの美しい元妻マリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)の登場からです。

 

 このペネロペ・クルス以外考えられないくらいはまり役のエキセントリックなマリアを演じて、彼女はアカデミー賞助演女優賞を受賞。確かにすごく魅力的です。

 

 しかし・・私が共鳴できるのは、ヴィッキーとクリスティーナのふたりです。全く正反対の行動や考え方をとるふたりですが・・おそらく女性なら誰しも両方の面を持っているのではと思ったりしたわけです。

 

 慎重に現実的な計算をしながら先読みしたり・・でも思いのほか情熱的な部分を持っていたりとか・・自由奔放に生きているつもりでも結局常識から逃れられなっかたりとか。

 

 そういう現代女性の姿を、バルセロナという魅力的な街で、これまたとびきり魅力的な男性を通してちょっと辛くも愛すべき存在として描いているのかもしれませんね。

 

 

「人生色々あるけど・・何もないよりはあった方がいいんじゃない?」ウッディ・アレンの声が聞こえそうなラスト。

 私も・・・賛成です。

 

 73歳でこの映画を作ってしまったその活き活きした感性に驚きます。

 

 私が若いころは、ウッディ・アレンといえばインテリな映画通でなければその良さがわからないだろうというイメージでした。最近ヨーロッパでの作品作りが増えてきて、「マッチポイント」での成功により新しいアレン像ができてきたような気がします。

 

 オリジナルの脚本を自分で書き続けている監督としても特別な存在で、当然脚本が素晴らしいのですが、映像も美しくわかりやすい映画になっていると思います。

 

 またペネロペ・クルスもそうですが、俳優が持つ魅力を最大限に引き出しているところも見逃せんませんよね。現在ペネロペの旦那さんであるハビエル・バルデムも、とんでもない女好きな役を非常にうまく演じていて・・彼なしではこの映画は成り立ちません。・・・実は、大ファンです。

 

 

 スカーレット・ヨハンソンも可愛く魅力的ですが・・・彼女は「マッチポイント」の方がはまり役かも・・・マッチポイントの舞台ロンドンとジョナサン・リース・マイヤーズのイケメンぶりも一緒に楽しみながら、絶妙な脚本を楽しんでいただけたらと思います。

 

 

 ついでといってはなんですが・・2011年アカデミー賞脚本賞受賞作品の「ミッドナイト・イン・パリ」もお奨めしておきます。

 

 

人間とは、脳みそ活き活きである限り・・・いつまでも若いんだなって思えるある映画監督のお話でした。

                         2013.11.10

 

 

 

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