チョコレートドーナツ&ミルク

     Any Day  Now     &  Milk

 

 甘い邦題ですが、甘くない映画2本紹介します。

 

  1979年カルフォルニア。

 歌手を夢見るルディ(アラン・カミング)がショーダンサーとして働くゲイ・バーに、地方検事のポール(ギャレット・ディラハント)が立ち寄り、二人はひと目で恋に落ちます。

 

 生きるだけで精一杯のルディと、ゲイであることを隠した生活に疲れ、理想さえも失いかけていたポール・・お互いの存在によって息を吹き返したかのように見えます。

 

 そして、ルディが気にかけるダウン症の少年マルコの母親が、麻薬所持で逮捕されたのをきっかけに、三人で一緒に住もうとポールが提案したのでした。

 

 生まれて初めて愛のある家庭を知ったマルコは、喜びですすり泣きます。二人はそんなマルコを愛して守り抜こうと決心するのですが・・・。

 

 

 この映画「チョコレート・ドーナツ」の時代設定は1979年であり、その一年前の1978年は、ゲイであることを公言して初めて選挙で公職についたハーヴェイ・ミルク(1930~1978)が暗殺された年でした。

 

 彼の生き方は、「MILK」(2008年、ガス・ヴァン・サント監督、ショーン・ペン主演)という素晴らしい映画があるので、そちらをご覧いただければと思います。私自身、数年前観たときに、まさに目からウロコの衝撃で、人生を変えた一本となりました。

 

 衝撃を受けた理由のひとつは、1978年というそんな大昔でないアメリカで、「条例6」という法案が既のところで可決されそうになっていたという事実を知ったからです。

 

 「条例6」とは、「教職にある同性愛者は、その性的指向を理由に解雇することができる」という内容です。

 

 当初可決が優勢とされていたのですが、ミルクの活動や、リベラルな思想の人たちが結局は動き出し、土壇場ぎりぎりで否決を勝ち取ったようです。しかし、もし可決されていたなら・・・アメリカは今とは違った方向に進んでいたかもしれません。

 

 でも、これが民主主義であり、どんな結果であれ双方が責任を負うという事実を再認識。そして、それがわかっていたからこそ、最後に立ち上がった人たちがいたわけで・・・米国における民主主義の歴史の深さを思い知らされました。

 

 

 そして、そういう過程の中にあっても、まだ同性愛者への偏見が根強い時代であったのは間違いないという1979年。

 

 

 チョコレートドーナツの結末は、哀しく苦く胸がしめつけられるのですが・・・なぜか暗いだけの後味ではありません。

 

 同性愛者と障害を持つ少年という特殊な話としてだけでなく・・マイノリテイーであったり、人と違うということが原因で小さな幸せを失ってしまう可能性は、誰にでも起こりうることです。


 しかし、逆に言えば、愛があれば、小さな幸せを守ることもできるかもしれない。ほとんど忘れかけていた希望を見出す。


 そのかすかな希望が、ほんわかと明るい灯りとなり・・・よけい胸さわぎが続くのである。


                           2015.1.7

 

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