中学校の図書館は、藤棚や花壇に囲まれた古い校舎の二階にあり・・・隠れ家のようでもあり、古びた本や机の匂いがとても落ち着かせてくれるお気に入りの場所でした。
図書館は好きでも、良い読書家ではなかった私ですが、夏休みになると分厚そうな本を文学全集から選んで借りて帰ったものです。
その選ぶ基準は挿絵であり・・・18世紀の人物や風景に魅かれて選んだのがジェイン・オースティンの「エマ」でした。
夏の長い午後・・黙々と苦行のように読書する。
実のところ、さっぱりわからなかった。
おもしろくないわけではない。ただ中学生には退屈であったのだろう・・静かな田舎の夏休みのイメージと重なり、逆に強い印象を残したのは確かです。
その当時ジェイン・オースティンはたぶんメジャーではなかったと思う。英文学女流作家はブロンテ姉妹がポピュラーでした。
この20年ほどでオースティンが広く知られるきっかけとなったのは、映画の力があるのではと思います。
「いつか晴れた日に」(分別と多感)エマ・トンプソン アカデミー脚色賞受賞1995
「エマ」グウィネス・パストロー主演1996
「プライドと偏見」(高慢と偏見)キーラ・ナイトレイ主演2005・・・他にもコリン・ファース出演の作品もあるが、後に「ブリジット・ジョーンズの日記」(現代版高慢と偏見)にも彼がダーシー役で出ているのが有名な話。
「ジェイン・オースティン秘められた恋」アン・ハサウェイ主演2007・・これはオースティンの自伝映画
どの映画も好きで、どの本も読みたくなる。読んだ気になるのが・・困ったところです。
そんな長年のおつきあいのオースティン。2007年に作られたこの「ジェイン・オースティンの読書会」には、当然興味深々で借りて観ました。
実のところさっぱりわからなかった。
おもしろくないわけではない。2008年に観た時にはそれぞれの選択やハッピーエンドらしき結末がどうも納得できなかった。人物や設定は魅力的なのに残念な映画として、逆に強い印象に残ったのは確かです。
しかし・・2年ほど前から繰り返し観るようになり、どんどん好きになってきたのです。私の中の変化でしょうか。
ちょっと地味なオープニングもよく見ると非常におもしろい。
駐車場やお店やスポーツクラブ・・どんくさい私はもちろん、かっこいい貴方も必ず体験しているかっこ悪く気恥ずかしい日常の出来事。
滑稽な日常の繰り返しが人生だとユーモアで乗り切るのがオースティン風?
ブッククラブのメンバーは20代から50代と思われる様々な年齢、職種、立場の5人の女性と、SFおたくのキュートな若い男性ひとり・・。
最初は「このひと合わない・・」的なオーラが飛び交うぎくしゃくした会だったのが、回数を重ねて「仲良くなる」・・・というより「慣れていく」。
違った考えや価値観を受け入れるということは、多様な人格の人たちを受け入れるということで・・自分の考えや生き方を犠牲にするということではない。
たぶんそのことが人生を豊かにするのだと思う。
そしていつの間にか変わっている。
最初に感じた私の違和感も・・こういうのもありだな・・と、今は思える。私は違うかもしれないし貴方はそうかもしれない。場合によっては私もこうするかも・・ジェインはどうするかしら。
みなが好き勝手をしているようで、いわゆる常識も忘れない・・いやたまに常識を思い出す大人の集まり・・そんな関係をもし作れたら大事にしたいものですね。