今までの価値観が大きく変わるような作品との出会いは、自分の中の新しい引き出しを開けてくれます。
この作品は映画ではなく、人気小説をテレビアニメ化したものです。しかし、映画以上に映画らしいというか・・・アニメという枠組みを大きく超えた作品でしたので、紹介します。
「フェイト/ゼロ」は、願いを叶える万能の釜である聖杯をめぐって、7人の魔術師が闘う「聖杯戦争」の物語です。
闘うのは、魔術師がそれぞれに召喚した「サーヴァント」と呼ばれる英霊たちであり、彼らの死闘によって聖杯の行方が決まることになります。
そして、英霊にもクラスがあり、誰がどのクラスの英霊と組むかにより大きく勝敗は左右されますし、主従の関係によっても(チームワークですね)作戦に影響します。
そこまでして、なぜ聖杯を手にいれたいのか・・・それぞれの思いや生き方が闘いを通して語られて・・観ている私も深く入り込んでしまい考えさせられてしまいます。
この作品の原案は「Fate/stay night」というゲームです。
stay nightはゲームクリエイターの奈須きのこさんによって2004年に作られました。
その後にstay nightの「前日譚」というべきスピンオフ作品として虚淵玄さんが書いたのが、このゼロです。
実は、虚淵玄さんは以前essay6でとりあげた「まどか☆マギカ」の原作者でもあり、今一番尊敬する作家のひとりです。
すごくダークでハードな物語を、独特の世界観に色づけしながら書き切る・・まさにハードボイルドな作家さんです。その上・・・わかりやすく美しい文章を描かれます。
フェイト・/ゼロの小説は、星海社から全6巻で発売されてます。1巻の最後のご本人のあとがきが素晴らしく・・・作家魂に触れることもできますし、ゲームから小説への経過もよくわかります。興味のある方はぜひ・・。
さて、本編アニメの方に話を戻しますと・・・キャラクターが、また魅力的なこと!
サーヴァントのセイバーというクラスに現れるのが、アーサー王の英霊なんですが・・・実はアーサー王は金髪の小さな美少女だったなんて・・・。
ありえないことを現実のように描いてくれるのがアニメなんですが、いくらなんでもそれは共鳴できないでしょうと言っている方・・・私も最初はそうでしたっ。
他にも英雄王ギルガメッシュとか、古代マケドニア王国のイスカンダル王とか・・・歴史好きになってしまいそうです。
美術や背景なども本当に鳥肌が立つほど素晴らしく・・・アニメ制作のスタッフのレベルの高さや心意気も感じられます。
それは、原案者である奈須きのこさんに対するリスペクトであったり・・それぞれが新しい事に挑戦していくという姿勢であったり。こういう力が集まって、今の日本のアニメ界を一気に引き上げたのだろうと感じました。
また音楽がとてもいいです。梶浦由記さんという方のドラマティックな音楽が非常によく合っていて恍惚となります。まどか☆マドカも担当されています。
攻殻機動隊の菅野ようこさんもそうですが・・・日本の女性音楽家はすごいな~と感激してしまいました。
大人になっても、こんなに感動できるアニメに出会えるなんて・・・素直に生きていて良かったと思えます。
ただし・・・こちらも中身はダークなドルチェではありますので・・・お子様には充分注意をしてあげてくださいませ。
2013.10.20