私にとっての巨匠とはリドリー・スコット監督です。
その巨匠の豪華絢爛キャストによる話題の映画とくれば、観にいかないわけにはいきません。そういうわけで早速初日に映画館に行ってまいりました。
弁護士として成功したカウンセラー(マイケル・ファスベンダー)は美しく一途な女性ローラ(ペネロペ・クルス)という恋人と共に充実した生活を送っていました。
セレブな友人ライナー(ハビエル・バルデム)は、つがいのチーターを飼う謎の美女マルキナ(キャメロン・ディアス)と暮らしていますが、カウンセラーに裏社会の仕事を持ちかけます。
セレブな暮らしをまのあたりにしているカウンセラーは、愛するローラのため高価なダイヤの婚約指輪を手に入れたこともあり、誘いに乗ります。
裏社会(麻薬取引)のブローカーであるウェストリー(ブラッド・ピット)は、カウンセラーに危険だからやめたほうがいいと警告をするのですが・・・カウンセラーに迷いはなく、一緒に仕事をすることになります。
順調な滑り出しかと思えましたが・・・ある偶然のような出来事により、3人の男性と恋人に容赦ない出来事が降りかかってきます。
はっきりいいますと・・R15そのままの映画ですし、誰にでもお勧めというわけにはまいりません。
通常の米国映画なら、誰かの助けがあったり最後に主人公の大逆転があったりするのですが・・・全く容赦はありません。
リドリー・スコット監督は様々なジャンルの映画を撮っていて、SF大作(エイリアンやブレードランナー、プロメテウス)や歴史ロマン大作(グラディエーターやロビン・フッド、キングダム・オブ・ヘブン)、あるいは戦争ドラマ(ブラック・ホーク・ダウンやG・I・ジェーン)などが有名です。もちろんほかにも色々あります!
私が、今回一番思い出したのは・・「ハンニバル」です。
2001年のこの作品は、あまりにショッキングな内容で、「羊たちの沈黙」の続編でありながら大きくキャスト、監督が変わったトマス・ハリス原作の映画です。
その問題作を、圧倒的な映像美と上品な音楽・・・的確で繊細な人物描写で最後まで描ききった監督の力。
その時と同じような原作を生かすという覚悟を感じました。
そう考えると・・・この映画の要は、豪華絢爛キャストではなく、原案脚本を書いたコーマック・マッカーシーだと思います。
実は、この作者については何も知らず・・・彼の原作でコーエン兄弟が作り、ハビエル・バルデムを世界的スターに進ませた「ノーカントリー」は観ており・・・斬新であった(ハビエルの髪型だけでなく)のは確かでしたが、消化しきれなかったことも事実です。
しかし、今回この難解な作者について・・・非常にわかりやすい解説をしてくれたのが、パンフレットに載っていた黒原敏行さんの文章です。
黒原敏行さんは、日本で発売されているすべてのコーマック・マッカーシーの作品を翻訳されている有名な英米文学翻訳家の方でした。さっそく悪の法則の脚本(早川書房)も買ってしまいました。(こちらの訳者あとがきもわかりやすいです)
それくらい目から鱗のわかりやすい解説文でした。
普通に考えると・・・身の程をわきまえて安易に犯罪に手をださないように・・・という教訓的な映画だということになるのですが、そう簡単なメッセージ映画ではないようです。
少し俳優について。
後半電話で、カウンセラーにハイトーンソフトボイスで無情なアドバイスをする貫禄たっぷりの男性。
実は、1980年後半からサルサ界を一世風靡したルーベン・ブラデスというすごいミュージシャンです。1985年のグラミー賞授賞の「ESCENAS」Rube'n Blades y Seis del Solar はCDになってすぐ買いをしたお宝CDです。映画にもちょくちょく出ていらっしゃいますが・・機会あれば音楽もぜひ。
ペネロペ・クルスはちょっと今回は難しいかなと思っていましたが・・・初期の頃の「オール・アバウト・マイ・マザー」や以前essay5取り上げた「エレジー」などではセクシーではあるが、一途な聖女のような役をしており・・・そういう面を引き出したい監督も多いのかもしれませんね。
最後に、キャメロン・ディアス。
大女優になった瞬間を観ちゃいました!
個人的な今年のベストアクトレスに決定したほど、素晴らしかったです。
通常想像もできない他国の他人の立場に身を置いてみるということは映画ならではのこと・・・覚悟がある方のみへのお勧めとなります。
映画館で鑑賞されたら、パンフレットもお忘れなく。
2013.10.19