クリスマスが一番孤独を感じるから・・・クリスマスは嫌い。
長い人生、そんな気持ちになる時期があるかもしれません。
私自身そんな時期に一番再生回数が多かったのが、この映画です。(ちなみに物語の時期はクリスマスではありません・・)
売れっ子の恋愛小説家のメルヴィン(ジャック・ニコルソン)は、病的と思えるほど潔癖症で、おまけに頑固で人嫌いな中年男性です。
外出嫌いのメルヴィンが、唯一楽しみにしている・・というか我慢ができるのがキャロル(ヘレン・ハント)の働く食堂でのランチ。ただし給仕がキャロルでないとパニックしたり、へそを曲げて怒鳴り出す困ったお客さんです。
メルヴィンの高級アパートメントの隣の住人サイモンは、ゲイのアーテイスト。お互い絶対関わり合いたくないと嫌悪しながらも・・・サイモンが強盗に襲われて以来、しぶしぶではありますが、少しずつ隣人として近づいていきます。
そんな時に、キャロルの病気の息子の症状が悪化して食堂を欠勤することに・・・。困り果てたメルヴィンは、彼女の家まで勝手に押しかけ「給仕」するように要請?します。当然憤怒したキャロルに追い出されますが・・・救急病院に息子をかつぎ込む姿を見て、メルヴィンはこっそりと名医を手配します。
名医によって、息子の病気は格段に良くなりますが・・・メルヴィンの好意を素直に受け取ることを躊躇するキャロル。
そんな疑心暗鬼のキャロルと満身創痍のサイモンと・・下心満載のメルヴィンが、一台の車に乗ってサイモンの故郷を目指します。さて、この旅で救われるのは誰でしょう・・・!?
なるべく関わり合いたくないようなタイプの男性が、徐々に変化していく過程での混乱と戸惑い・・・ジャック・ニコルソンがみっともないけど憎めない中年男性の孤独と愛情を好演して、その年(1997)のアカデミー主演男優賞を授賞。
ひとりで病気の息子を育てるのに手一杯で、幸せからすっかり遠ざかってしまい・・・不運と孤独に疲れ果てた情の深いウエイトレスをヘレン・ハントがこれまた好演・・・アカデミー主演女優賞を授賞して、主演男女のW授賞という栄冠に輝きました。
もうひとりの主役、サイモンは・・・不運な出来事で一瞬にしてすべてを失っても誰にも頼ることのできないゲイの青年の孤独と勇気を好演して、静かに熱い感動を呼び起こしてくれます。グレッグ・ギニアは助演男優賞にノミネートされました。
監督は、「愛と追憶の日々」や「ビッグ」のジェームス・L・ブルックスです。
音楽が洒落ていて・・・!!ハンス・ジマーです。
サントラはジマーのオリジナル曲と劇中で効果的に使用された有名アーテイストたちのヴォーカルのどちらも楽しめます。
さて、俳優のジャック・ニコルソンは、私にとっては映画界に存在するのが当たり前のような偉大な俳優の一人ですが・・最近は「恋愛適齢期」や「最高の人生の見つけ方」など成功した「元」エキセントリックな初老の役が目につきます。
それも味わい深いのですが・・・まだ「カッコーの巣の上で」(1975)を観ていない若い方には(映画好き年配の方はほぼ観ているかと)、機会あれば若き日のジャック・ニコルソンの映画史上に残る傑作を体験してみていただけたらと思います。
「恋愛小説家」という題名は邦題で、私は非常に気に入っていますが・・・原題の「as good as it gets」も面白いです。「最高に素晴らしい」という意味と「これ以上はよくならない」という反するふたつの意味があるようです。
単純なようで深い意味のあるこの題名は、繰り返し見てみたくなるこの映画をよく表しているなと、また新しい発見でした。
もちろん幸せなあなたにもお勧めいたします。
(2013.12.11)