2012年、ハンガーゲーム1を家で見ていた時、外は冷たい雨が降っていて・・・その冷たい雨が降る現実が映画のようで、見終わった映画が現実のような錯覚に襲われた感覚をよく覚えています。
映画がすごく良かったからではなく・・・「バトルランナー」を観た時の衝撃には及ばないし、基本的には子供(若者)が殺し合うという設定は、好きではないし。
でも何か気になって、雨の中を原作を買いに走り出るように本屋さんに向かいました。
物語は・・・独裁国パネムが、隷属地区である12の地区から毎年十代の男女一人ずつ24人を選び、一人しか生き残れない「ハンガーゲーム」というサバイバルゲームに強制参加させることにより民衆を完全支配するという過激なストーリー。
ハンガーゲーム 1 は、カットニス(ジェニファー・ローレンス)という少女が幼い妹の代わりに志願して、同じ地区のピーター(ジョシュ・ハッチャーソン)と共に過酷な戦いを勇気と愛で勝ち抜く所までのお話。
2 では、民衆の希望のシンボルとなりつつあるカットニスを抹殺しようとスノー大統領(ドナルト・サザーランド)が、歴代の勝者24人が戦う特別なハンガーゲームを主催。
心身共に限界状態のカットニスと彼女を支える周りの人たちはどう戦うのか・・。
完結編の3は、今後二部構成で制作される予定です。
原作者は、児童向け番組や児童文学に関わってきたスーザン・コリンズという女性で、ハンガー・ゲーム(三部作)はヤングアダルト向け小説として世界中で大ベストセラーを記録。
原作を読むと、この作品の持つ繊細な面がよくわかります。
ヒロインであるカットニスは、およそヒロインらしくなく・・・暗い少女時代を引きずる欝気味な性格であり・・・プレッシャーのかかる中、ふたりの素敵な男性よりも自分の事が大切だという現実的な人物描写に年齢を超えて共鳴してしまいます。
普通の少女(優秀ではあるが)であるからこその悩みや葛藤・・・揺れる恋心・・そしてたどり着く本当の愛・・・過酷な環境を一緒に成長する気分にさせてくれます。
スーザン・コリンズは、自らの反戦や平和への思いを、自分の子供に語るように世界の若者たちへ伝えるため、ディストピア小説という形で見事に描ききったと思います。
(ディストピアとはユートピア理想郷の反対の意味で使われ、近未来の荒廃した社会や恐怖政治などを描くことにより、平和や自由の大切さを逆に強調するという手法)
若い人に未来を託すということと・・・正しく物事を見る力の大切さと・・・そして、有難いことに我々大人たちにもそういう子供達を助けるという役割がまだあると信じさせてくれる彼女のメッセージは、私たち大人にも希望を与えてくれると思いました。
映画も健闘していて、主役のジェニファー・ローレンスの参加により質の高い映画になったことは間違いないと思います。
彼女の素晴らしい本質を知るにはアカデミー主演女優賞を授賞した「世界にひとつのプレイブック」よりも、以前にノミネートされた「ウインターズ・ボーン」をお勧めします。
「ウインターズ・ボーン」2010は、アメリカの闇の部分を描いていて・・・実はアメリカの事何も知らないんだよな~と思い知らされる映画なのですが・・・人間としての世界共通の情に心が震える名作です。
彼女の骨太な演技とシンプルな映像が素晴らしい。
戻って音楽ですが、ハンガーゲーム2のエンディングで流れる曲が無国籍で年代不詳な雰囲気を漂わせていて、最後にぴったりすぎたので「誰?誰の曲?」とすぐ調べたら・・・コールドプレイの「アトラス」という曲でした。
新しいのにレトロなサントラ盤もお勧めです。
私にとっては、新しい世界のひとつともいえるヤングアダルト小説というジャンル。
今年も新たな引き出しを開ける旅が始まりました。
(2014.1.1)